うるう年には不吉なことが起こる......?:「タイタニック号沈没」から「あさま山荘事件」まで
今年はうるう年にあたるが、古代ローマ時代、うるう年は縁起が悪いとしてあまり好まれなかったらしい。常識的に考えれば普段より1年が1日長いだけで、とりわけ不吉だということもあるまいが、確かに大事件が起こることも珍しくない。そこで、今回はこれまでに発生したうるう年の一大事を見てゆくことにしよう。
うるう年となった1616年、世界を代表する2人の文豪がこの世を去った。ウィリアム・シェイクスピアとミゲル・デ・セルバンテスだ。シェイクスピアはストラトフォード=アポン=エイヴォンで4月23日に、セルバンテスはマドリードで4月22日に息を引き取ったとされている。
写真:Pixabay - Ángeles Balaguer (Angeleses)
セイラム魔女裁判における最初の逮捕状が発行されたのは、うるう年だった1692年の2月29日。ターゲットとなったのはティテュバ、サラ・オズボーン、サラ・グッドという3人の女性たちだった。
フランスでギロチンによる処刑が始まったのは1772年。以降、フランス革命期だけでおよそ1万7,000人がこの方法で死を迎えている。最初の犠牲者は強盗のニコラ=ジャック・ペルティエ、最後となったのは女性に対する暴行殺人で1977年に処刑されたチュニジア人移民のハミダ・ジャンドゥビだ。
1812年、ロシア遠征に乗り出したナポレオン・ボナパルトはここで痛恨の一撃を受ける。その後、フランスばかりかヨーロッパ全体が激動の時代へと突入することとなった。
「不沈船」という触れ込みで航海に乗り出した豪華客船タイタニック号だが、1912年4月に北大西洋で氷山と衝突、あえなく沈没してしまった。しかし、1,500人以上の犠牲者を出したこの事故によって、海上における危機管理体制が見直されてゆくこととなる。
1936年、スペイン共和国政府に不満を持つフランシスコ・フランコ将軍が軍の一部を率いてクーデターを決行、スペインはそのまま内戦へ向かうことに。戦争は3年間におよび、双方で60万人近い犠牲者を出す大惨事となった。
ポーランド南部の主要都市クラクフから南西およそ60キロメートルに位置する街、オシフィエンチム。ここに現代史上最悪となる悲劇の舞台、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所が建設されたのは1940年のことだ。同収容所では、ユダヤ人をはじめ100万人あまりの人々が犠牲になったと見られている。
1944年、当時24歳だったカロル・ユゼフ・ヴォイティワ(後のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世)はナチス占領下のクラクフでトラックにはねられ、九死に一生を得ることとなった。
1948年1月30日、非暴力・不服従を掲げインドを独立へと導いたマハトマ・ガンディーが凶弾にたおれる。犯人は、独立後の宗教対立の中で融和を説くガンディーを快く思わないヒンドゥー教原理主義者、ナトラム・ゴドセだった。
1960年には観測史上最大規模となるチリ地震が発生。マグニチュード9.5を記録したこの大震災でチリ南部は壊滅状態となったほか、2,000人近い犠牲者が出るなど被害は甚大だった。
同年、モロッコでは2月29日にアガディール地震が発生。同国南西部の街アガディールでは、当時の人口の3分の1にあたる1万2,000~1万5,000人が犠牲となった。
1968年には、アフリカ系アメリカ人の公民権運動を率いたマーティン・ルーサー・キング牧師がメンフィス(テネシー州)で凶弾にたおれる。犯人は白人で強盗の常習犯だったが、事件の真相は現在も闇に包まれたままだ。
1968年6月5日、ジョン・F・ケネディ元米大統領の弟で上院議員だったロバート・ケネディが、ロサンゼルスでパレスチナ移民のサーハン・ベシャラ・サーハンに銃撃される事件が発生。犯人は動機について、ケネディ上院議員の親イスラエル的な姿勢に不満があったと述べ、終身刑が下されることとなった。
1972年に開催されたミュンヘンオリンピックでは、パレスチナのテロ組織「黒い九月」がイスラエル人アスリート11人を誘拐・殺害している。
一方、日本では同じ年にあさま山荘事件が発生。鉄球で建物の壁を破壊するという大掛かりな作戦や激しい銃撃戦が生中継され日本中に衝撃が走った。
1976年3月24日、アルゼンチンのホルヘ・ラファエル・ビデラ将軍がクーデターを起こし、イサベル・ペロン政権を転覆。同国史上もっとも悪名高い軍事政権が誕生することとなった。この時期、アルゼンチンでは3万人以上が行方不明となったほか、幼児の誘拐など政府による犯罪が横行した。
1980年、マーク・デイヴィッド・チャップマンがジョン・レノンに銃撃を浴びせ殺害。世界中のビートルズファンを悲しませた。
2004年に発生したスマトラ島沖地震では、大規模な津波が発生。インド洋に面した国々で数十万人が犠牲となったほか、多数の都市が壊滅的な被害を受けている。
2008年、大手投資銀行のリーマン・ブラザーズが破綻。世界金融危機へと発展してゆく。
2016年、ブラジルのサッカークラブ、シャペコエンセの選手・スタッフ一行を乗せた飛行機がコロンビアの山中に墜落。生存者はサッカー選手のエリオ・ネト、アラン・ルシェウ、ジャクソン・フォルマンに加え、ジャーナリスト1人と乗員2人だけだった。
世界保健機関(WHO)によれば、2020年に始まったコロナ禍によって全世界でおよそ700万人が犠牲になったという。果たして、2024年はどのような1年になるのだろうか?