もらった役から降板させられてしまった俳優たち
映画が完成するまでにはさまざまな出来事が起こる。ときには撮影途中にメインキャストが降板させられることだってある。たとえば、大女優ジュリアン・ムーアもそんな目に遭ったことがあるのだ。
作家リー・イスラエルの自伝を原作とする伝記映画『ある女流作家の罪と罰』。主演はジュリアン・ムーアになるはずだったが、脚本を担当するニコール・ホロフセナーの強い反対にあい、代わりにメリッサ・マッカーシーが配役された。
ウディ・アレン監督の『カイロの紫のバラ』には当初、マイケル・キートンがキャスティングされていた。だが、1930年代のアメリカが舞台となるこの映画にマイケル・キートンの現代的なたたずまいはそぐわないのではとウディ・アレンは考え始め、結局この役をジェフ・ダニエルズに任せることになった。
『ゲティ家の身代金』、その公開まであと1ヶ月というタイミングで、ジャン・ポール・ゲティを演じたケヴィン・スペイシーの過去のセクハラ疑惑が報道された。これはまずいと感じたリドリー・スコット監督とプロデューサー陣はケヴィン・スペイシーの出演シーンを全て撮り直すことに決め、クリストファー・プラマーに声をかけたのだった。
『トランスフォーマー』(2007年)のヒロインを演じたミーガン・フォックスは、続編の『トランスフォーマー/リベンジ』(2009年)にも出演したが、マイケル・ベイ監督とそりが合わなかったようで、第3弾の『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』には出ていない。
ライアン・ゴズリングはピーター・ジャクソン監督の『ラブリー・ボーン』に出演が決まっていたが、役作りで体重を増やしたことが裏目に出て、監督のイメージとずれてしまった。ゴズリングは降板し、マーク・ウォールバーグがその役を演じた。
『地獄の黙示録』のウィラード大尉役にはハーヴェイ・カイテルが据えられていた。しかし、撮影が始まって2週間後、フランシス・フォード・コッポラ監督はハーヴェイ・カイテルの降板を決め、かわりにマーティン・シーンを起用する。撮影はそこからさらに難航していくのだが、それはまた別の話だ。
ホアキン・フェニックス主演の映画『her/世界でひとつの彼女』に出てくる人工知能型OSサマンサの声は、撮影中はサマンサ・モートンが吹き込んでいた。しかし、ポストプロダクションの段階で、サマンサの声はスカーレット・ヨハンソンのものに変えられた。
『ビバリーヒルズ・コップ』は当初、シルヴェスター・スタローンが主演をつとめる予定で、彼も加わって脚本がシリアスな方向へ書き改められたという。しかし結局、コミカルな演出も捨てがたいと感じたマーティン・ブレスト監督は、スタローンを外してエディ・マーフィーを起用することにした。このときスタローンが持ち帰った脚本は、のちにアクション映画『コブラ』として日の目を見ることになる。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でマイケル・J・フォックスが演じている役は、当初エリック・ストルツが演じることになっていた。だが、ロバート・ゼメキス監督の判断で、彼は降板させられる。まじめすぎて役とは合わなかったのだ。
マーベル映画『マイティ・ソー』にひきつづき、続編の『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』でもナタリー・ポートマンがジェーン・フォスター役を演じている。だが、ポストクレジットのおまけシーンでクリス・ヘムズワースにキスしているのは、ウィッグをつけたエルサ・パタキー(クリス・ヘムズワースの妻)である。ナタリー・ポートマンはそのとき別の事情があり、都合がつかなかったもよう。
チャーリー・ハナムは『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のクリスチャン・グレイ役に抜擢されたが、サム・テイラー=ジョンソン監督とのあいだに一悶着あり、降板となる。グレイ役はジェイミー・ドーナンが演じることになった。
ピーター・ジャクソン監督が『ロード・オブ・ザ・リング』のアラルゴン役からスチュアート・タウンゼントを降ろした経緯については、よく分かっていないところもあるが、どうやらタウンゼントはその役にとって若すぎたようだ。かわりにヴィゴ・モーテンセンが演じることになった。
2004年から2012年にかけて放送されたテレビドラマ『デスパレートな妻たち』のニコレット・シェリダンは、原案者のマーク・チェリーと仲が険悪になり、2009年以降は出番が無くなる。彼女はこれを不当だとして訴訟を起こした。
ジェームズ・マクティーグ監督『Vフォー・ヴェンデッタ』のV役にはジェームズ・ピュアフォイが抜擢されたが、途中で降板。そのまま使われたシーンもあるが、残りのほとんどはヒューゴ・ウィーヴィングが演じている。
アン・ハサウェイは、出産シーンを演じなければならないと知り、ジャド・アパトー監督『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』を降板する。代わりにキャサリン・ハイグルが起用された。
ピーター・ウィアー監督は『トゥルーマンショー』のクリストフ役をデニス・ホッパーに任せるつもりでいたが、結局はエド・ハリスが演じることになった。デニス・ホッパーはセリフを覚えてこなかったし、態度も横柄だったからだ。
『マトリックス』のタンク役で知られるマーカス・チャン。彼は続編の『マトリックス リローデッド』、『マトリックス レヴォリューションズ』の出演もオファーされていたが、出演料をめぐっていざこざがあり、結局「タンク」は物語から退場することになった。その後マーカス・チャンはウォシャウスキー姉妹に脅迫の電話をかけた疑いで2000年に逮捕されている。
カリスマ・カーペンターは、テレビドラマ『エンジェル』をシーズン4の途中で降板した。彼女がのちに告発したところでは、制作者ジョス・ウェドンは当時、彼女の人格を攻撃し、宗教的信条をあざわらい、その他ハラスメントと受け取れる言葉をカリスマ・カーペンターにかけたという。
『ゼロ・グラビティ』でジョージ・クルーニーが演じた役は、はじめロバート・ダウニー・Jrが演じることになっていた。しかしアルフォンソ・キュアロン監督は、役が求める抑制された動きとロバート・ダウニー・Jrの持ち味がしっくりこないことを見てとり、これではうまくいかないと考えたのであった。
『アメリカン・サイコ』のパトリック・ベイトマンの役は、はじめレオナルド・ディカプリオにオファーされていた。しかしディカプリオはオファーを断り、クリスチャン・ベールにチャンスが回ってきた。
テレビドラマ『フレンズ』でおなじみのリサ・クドロー。彼女は『そりゃないぜ!? フレイジャー』の出演も決まっていたのだが、パイロット版の撮影段階で役を降ろされてしまった。
1987年公開の映画『プレデター』。「ジャングルハンタープレデター」のスーツアクターはケヴィン・ピーター・ホールである。ところで、「ジャングルハンタープレデター」のスーツにはボツになったバージョンがあることはご存知だろうか。その中に入っていたのが、ジャン=クロード・ヴァン・ダムだった。
『エイリアン2』の撮影期間中、ジェームズ・レマーは禁止薬物所持の疑いで逮捕され、急遽マイケル・ビーンが代役をつとめた。
アシュトン・カッチャーは、オーディションで『エリザベスタウン』の主役に選ばれた。しかし、演技のリハーサルに立ち会ったキャメロン・クロウ監督は、彼を役から降ろしてしまう。この役はオーランド・ブルームが演じることになった。
実はトビー・マグワイアは、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』のなかでカナダ人小説家の役を演じていた。しかし、トビー・マグワイアは他のキャストと比べて知名度が高すぎるため、物語から浮いてしまうのではとアン・リー監督は考え、彼の出演シーンを削り、代わりにレイフ・スポールをカナダ人小説家の役に起用したという。
そのケヴィン・スペイシーと同じようなことが、クリス・デリアについても持ち上がった。クリス・デリアは未成年者に対する性的搾取を告発されたが、その告発の少し前にザック・スナイダー監督作『アーミー・オブ・ザ・デッド』の撮影を終えたところだった。出演シーンは映画からすべて削除され、代役のティグ・ノタロの演技やCGなどがその穴を埋め合わせたという。