もしもトランプ前大統領が返り咲きをしたら、ハリウッドにどんな影響がある?
アメリカの大統領選挙が目前に迫っている。ハリス副大統領とトランプ氏、どちらの候補が勝利するかによってエンタメ業界への影響が天と地ほど変わってくる可能性があり、業界はその動向を固唾を飲んで見守っている。
ハリウッドの俳優や脚本家は民主党候補のカマラ・ハリス副大統領に続々と支持を表明している。多額の寄付をする者や、集会に駆けつけて広く支援を呼びかける者もいる。
俳優や脚本家たちがハリス候補を支持するのは、もしトランプ候補が再選されれば、エンタメ界を取り巻く労働条件が悪化する可能性があるからだ。現行法ではそれなりに保障されている俳優や脚本家の権利も、あるいは無事では済まされないかもしれない。
その一方で、映画製作会社や配給会社はまた別の論理を持っている。映画産業に多額の資金を投入し巨額の収益を引き出している営利法人は、トランプ氏が返り咲いた場合にはかなりの減税が行われることを期待している。さらに、現行の独占禁止法も改訂されるだろうと考えている。
『バラエティ』誌が報じているように、2017年にトランプ政権は、旧制度において「最高35%」だった法人税率を「一律21%」へと軽減している。米シンクタンク「税制・経済政策研究所」(ITEP)によると、ディズニーとコムキャストはその後4年間でそれぞれ60億ドル以上の節約になったという。そして今回の大統領選で、トランプ氏は法人税率を15%まで引き下げるという公約を掲げているのだ。
しかしここで留意すべきは、だからといってトランプ氏がエンタメ大手の味方だとは言えないということである。というのも、もしトランプ氏が大統領に返り咲いた場合、共和党としての政策よりも、むしろ個人的な(しかもネガティヴな)感情に基づく政策を推し進める可能性があるからだ。そうなると、ハリウッドの製作大手や配給会社も不利な状況に追い込まれるかもしれない。
たとえばトランプ氏はすでに、大統領候補者テレビ討論会の進行などに不正があったとして米ABC放送(ウォルト・ディズニー傘下)やCBSテレビに対して放送免許の取り消しを求めている。また、『ニューヨーク・タイムス』紙など米メディアが報じているように、ロシア関連のニュースの扱いについてコムキャストを調査するとも発言している。
じっさいかつてのトランプ政権時代を振り返ると、2017年に米司法省が、AT&Tによるタイム・ワーナー買収を阻止するためにAT&Tを提訴している。この出来事は、多くの人には大統領による報復とも思われた。トランプ氏はタイム・ワーナー傘下のCNNの報道について、しばしば反感をあらわにしていたからである。
『ニューヨーク・タイムズ』紙が報じているように、トランプ氏は大統領の地位を最大限に活用し、敵対する人々を裁判にかけると言ってはばからない。つまり、それが番組であれ何であれ、彼にとって好ましくないものはすべて攻撃の対象となりうるということだ。「表現の自由」を振りかざすトランプ氏だが、他者の表現の自由を守ることにはあまり関心がないらしい。
法律事務所「グリーンバーグ・グラスカー」のスカイラー・M・ムーア弁護士は『バラエティ』誌で次のようにコメントしている。「私には、トランプ氏が共和党員たちに働きかけて、なんであれ政府に反することを国家反逆と定める法案を通過させようとする姿が目に浮かぶようです」
ムーア弁護士はさらに続けて、「また、彼が現行の名誉毀損法をひっくり返そうと動く様子も想像できます。もしそれが実現すれば、ずっと気楽に人々に食ってかかることができますから。しかしそれは、言論の自由を抑制することになるでしょう」
さらに、国際取引の問題がある。『バラエティ』誌が指摘しているように、トランプ氏はすべての輸入品に10%の関税を課し、中国からの輸入品には60%の関税をかけると約束している。
もしトランプ氏が大統領に再び選ばれ、関税がそのようになった場合、ハリウッドの映画産業は将来の展望を大きく狂わされることになるだろう。というのもハリウッドは、成長する中国市場にネットワークを拡大しようと好機を狙っているからである。したがって、どちらが大統領に選ばれるかは、ハリウッドの今後を占うきわめて重要な分かれ道なのだ。
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