名声高まるブタ画伯「ピグカッソ」:作品価格は300万円
いまのアートシーンを代表する画家ピグカッソをご存知だろうか。2016年生まれで400以上の作品を販売、なかには数百万円の値がついたものもある売れっ子の画家で、しかもなんと豚なのだ。
その人気は折り紙付きで、2022年11月には動物が描いた絵として史上最高額を記録したとしてギネスブックにも掲載されている。
問題の絵はその名も『野生と自由(Wild and Free)』という作品で、ピグカッソの出身地南アフリカ西ケープ州の海に打ち寄せる波を思わせる色使いが特徴。この絵は2021年12月13日に販売され、お値段なんと2万ポンド(約370万円)というのだから驚きだ。
ピグカッソはもともとお肉になる予定で育てられていたのだが、2016年に動物愛護活動家のジョアン・レフソンが農場から救出、レフソンが運営する「Farm Sanctuary SA」へと連れて行かれた。
ギネスワールドレコーズ公式ウェブサイトによると、納屋に連れて行かれたピグカッソはその場にあるものをすべて破壊し食べ尽くしたのだが、一揃いの絵筆だけは無事だったのだという。
それを見たレフソンはピグカッソの創作意欲を育てることを思いつく。レフソンはCBSニュースの取材にこう答えている:「どういうわけか、ピグカッソは絵筆に特別な関心があるようでした。キャンバス上で絵筆を操り、世界中で作品を売るようになるまでそう長くはかかりませんでした」
同じくCBSニュースによると、ピグカッソは「専用の絵筆を使い、絵具は子供用の毒性のないものを用いている。作品は抽象的で表現主義的で、完成した作品には自身の鼻を押し付けてサインしている。その際はアクリル絵具と飼料用テンサイとの混合物を使う」のだとか。
ピグカッソが儲けたお金はどうなるのか気になるところだろう。レフソンによると、得られた利益はすべて「Farm Sanctuary SA」に渡るのだという。
CBSニュースが紹介した声明で、レフソンは活動の目的を説明している。いわく、「動物の救出活動を続けるほか、現在の畜産業が残酷なものであり、動物を搾取しているだけでなく環境も破壊していることを広く大衆に知らしめる」ことを目指しているのだとか。
ピグカッソの芸術家としての名声はもはや確立されたものと言って良い。2019年には南アフリカの首都ケープタウンのウォーターフロントで個展「Oink(ブヒッ)」が開催されているのだ。
さらに、「Farm Sanctuary SA」ではピグカッソの作品を直接購入することが可能なほか、オンラインでも販売されている。値段は約7万円とお手頃(?)なものから70万円ほどのものまでさまざまだ。
それだけではない。いまやピグカッソの名声は世界中に広まっており、世界的な時計メーカーとコラボしたこともあるほど。
写真:Instagram @pigcassohoghero
その時計メーカーとはスイスの有名ブランド、スウォッチだ。2019年、日本では干支は猪年だったが、中国などでは豚年とされていた。その豚年を祝ってスウォッチがピグカッソとコラボし、作品をフィーチャーした限定版の時計を発売したのだ。
コラボの過程についてレフソンはこう語っている:「スウォッチからは色やスタイルなどについて漠然とした指示があっただけで、あとはすべてピグカッソがデザインしました!」コラボで得られた利益はすべて「Farm Sanctuary SA」に寄付されている。
「ピグカッソは本当に偉大です。ポークソテーになるはずが、いまやスウォッチのデザイナーですから」とレフソンは語り、豚の知性や創造性を強調している。
写真:Instagram @pigcassohoghero
ピグカッソの名声はヨーロッパやアメリカはもちろん、南米のブラジルやアジアの国々でも高まりつつある。次にハムを食べる時は、ピグカッソのことを思い出してしまうかもしれない。