各国でみられる古代ローマ遺跡:イギリス、スペイン、クロアチア......
古代ローマ時代の遺跡を訪れ、タイムトラベル気分を味わいたいのなら、行く先はイタリアだけではない。今回は、ヨーロッパと地中海沿岸を代表するローマ時代の遺跡を紹介していこう。
イングランドとスコットランドの境界線近くにあるハドリアヌスの長城は、ケルト人の侵入を防ぐために作られた長城で、皇帝ハドリアヌスの命によって建設された。1987年にユネスコの世界遺産に登録。
写真:David Mark / Pixabay
完成当初、この壁は118kmに達していた。壁の高さは5mほど。 現在でも徒歩や自転車で訪れることができる。
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イギリス最古の都市コルチェスターは、古代ローマの文献で属州ブリタニアの最初の首都として登場する。当時はローマ風にカムロドゥルムと呼ばれていた。
古代ローマ属州時代の遺構の資材を再利用して、写真のコルチェスター城が建設された。クラウディウス神殿の基礎の一部などを城の博物館で見ることができる。また第20軍団ヴァレリア・ヴィクトリクスが統治していた時代の城壁も、かなりの部分が現存する。
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バースには、世界で最も保存状態の良いローマ時代の温泉保養施設がある。紀元60年から70年にかけてウェスパシアヌス皇帝の命により建設が始まり、その後300年にわたって徐々に築かれた。
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ローマ帝国に支配される前から、ケルト人がこの場所に神殿を建てていたため、ローマ浴場はケルト文化との融合を象徴している。実際、ローマ人は侵攻後に、ケルトの人々がローマ帝国の風習に親しむよう浴場を利用したという。
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ローマ時代の大規模な遺跡群が良い状態で残されている。紀元前63年に古代ローマに征服され、戦略的・経済的に重要な位置を占めるようになった。最盛期を迎えたのは紀元2世紀のトラヤヌス帝の時代。ハドリアヌスの凱旋門、戦車競技場、2つの神殿、広場、公共浴場などが現存し、ペトラ遺跡に次いでヨルダンで2番目に人気のある観光スポットとなっている。
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イタリアとの国境に近いスプリトにある宮殿で、3世紀末ごろに古代ローマのディオクレティアヌス帝によって建てられた。1979年にユネスコの世界遺産に登録され、クロアチアを代表する歴史的建造物となっている。
エストレマドゥーラ州メリダは、スペインのローマと呼ばれ、ユネスコの世界遺産に登録されている。紀元前25年に建てられ、ローマ劇場、円形競技場、ミラグロス水道橋、トラヤヌス帝の凱旋門などの他、現在でも歩行者用に使用されているローマ橋が現存する。
写真:Jordi Vich Navarro / Unsplash
セゴビア市にある古代ローマ時代の水道橋。紀元1世紀頃に造られた。保存状態がとても良く現在でも使用されている。全長728m、高さ28メートル、アーチの数は166個で、セメントなどの接着剤なしで石の重みだけで造られている。首都マドリードから日帰りで行ける観光地として人気が高く、ユネスコの世界遺産にも登録されている。
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共和制ローマ期のフェニキア人都市カルタゴ・ノウァとしても知られるカルタヘナ。紀元前5世紀から1世紀の間に建設された6000人の観客を収容できるローマ劇場が有名で、メリダの古代ローマ劇場とならび、スペインで最も重要な古代ローマ劇場となっている。1988 年に多数の考古学者によって発掘され、博物館で近辺で発見された出土品を展示している。
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アンダルシア地方コルドバには、ローマ神殿の一部やローマ橋などが現存する。クラウディウス帝の命により建設が始まったローマ神殿は、40年後のドミティアヌス帝の時代に完成。柱の土台や祭壇などを見ることができる。
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トーリアにある古代ローマ時代の建築物で、ラテン語で黒い門を意味する。186年から200年にかけてローマ市壁の北門として建造された、アルプス以北の国々で最大のローマ時代の門。1986年、ユネスコの世界遺産に登録された。
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広大な砂地の中から発掘されたレプティス・マグナは、カルタゴの時代に栄え、ティベリウス帝の時代にローマ帝国に編入された。アフリカ初のローマ皇帝セプティミウス・セウェルスを輩出した街としても有名で、1982年に北アフリカ屈指のローマ都市遺跡として世界遺産に登録された。
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フランス南部プロヴァンス地方の都市アルルは、ローマ人が紀元前123年に街を占領するまではアレラーテと呼ばれていた。ローマ帝国属州時代に建造されたローマ劇場、円形闘技場、公衆浴場などの遺跡群が世界遺産に登録されている。
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ニース市内の小高い丘の上にあるシミエ地区には、マティス美術館やシャガール美術館の他にローマ時代の遺跡がある。2011年までニース・ジャズ・フェスティバルの会場として使用されていた競技場の他に、出土品が展示されている考古学初物館などがある。
「フランスのローマ」と呼ばれるニームは、紀元前28年頃にローマ帝国の植民地となった。古代ローマ時代の荘厳な遺跡が数多く残るが、一番有名なのは世界的に珍しい、ほぼ完全な形で現存するローマ神殿のメゾン・カレだ。
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世界で最も保存状態の良いローマ円形闘技場のひとつで、紀元前1世紀に建設された。当初は剣闘士の試合が行われ、その後に蛮族が侵入した際には要塞となり、 現在では闘牛やオペラなどのイベントが開催されている。1840年、フランスの歴史的建造物に指定された。
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ガルドン川に架かる水道橋で、上に行くほど幅が狭くなる3層のアーケードからなる。一番長い導水路のある上層は275メートル。ただの水道橋ではなく、全長50kmに及ぶ導水路の一部だ。
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南フランスプロヴァンス地方のオランジュは、アラウシオの戦の後、ローマ帝国に支配されるようになった。古代ローマ帝国は新たな土地を配下に置くと、戦いの勝利を祝って凱旋門を造る習慣があり、オランジュにも紀元前20年頃に凱旋門が建てられた。全面に刻まれたレリーフにはカエサルのガリア平定やアクティウムの海戦などが描かれている。
106年にトラヤヌス皇帝によってルーマニアのトランシルヴァニア地方に設立されたローマ帝国の属州。2つの広場、円形闘技場、水道橋、劇場、2つの穀物庫、神殿や民家などの跡をみることができる。
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アテネのパルテノンの丘にある古代ローマ時代の公共広場。紀元前12世紀頃に将軍ガイウス・ユリウス・カエサルが建設をはじめ、初代皇帝アウグストゥスが紀元2年頃に完成させた。風の塔、アテナ・アルケゲテス門、東プロピュロンなどが現存する。
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アレクサンダー大王の重臣リュシマコスにより築かれた。紀元前129年にローマ帝国のアシア属州となり、エフィソスとともに中心都市として栄えた。トラヤヌスの神殿をはじめ、多くのローマ時代の遺跡が残る。
トルコを代表する観光地パムッカレの頂上にローマ帝国時代に温泉保養地として栄えたヒエラポリス遺跡がある。ローマ浴場などのほかに、保存状態の良いローマ劇場がある。
写真:Jordi Vich Navarro / Unsplash
アンタルヤの街から東へ40kmに位置する、アナトリア最大の古代劇場。2世紀にマルクス・アウレリウス皇帝の命により建設された。2万人を収容可能な半円形の劇場で、保存状態がとても良い。現在でもオペラやバレエ公演が行われる現役の劇場だ。
写真:Helen Zimmer / Pixabay
ヘレニズム都市として栄えたが、紀元前2世紀に共和制ローマの支配下に入り、アシア属州の首府となった。かつての世界三大図書館のひとつであるセルシウス図書館と、5万人収容可能な劇場が最大の見所。
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キプロス共和国の古都パフォスは、ローマ時代はキプロスの首府だった。ローマ帝国属州行政官の住居跡のモザイクタイルの床が有名で、多くの観光客を集める。
写真:Erik Karits / Unsplash
チュニジア中部にあるスベイトラ遺跡は、アフリカで最も重要なローマ遺跡のひとつ。2世紀末頃に造られたアントニヌス・ピウスの門、公共広場、神殿、劇場などが現存する。
写真:Sofia Layla Thal / Pixabay
チュニジア北部にあるローマ時代の遺跡。紀元前2世紀後半からローマ人に支配され、神殿、民家、公衆浴場などの当時の遺跡群がユネスコの世界遺産に登録されている。
首都ダマスカスから約240kmに位置するパルミラは、紀元前1世紀頃からシルクロードの中継都市として栄えていた。ローマの属州となってからも、通商権を引き継いだため目覚ましい発展を遂げた。ローマ様式の建造物が数多く残っていたが、シリア内戦で治安が悪化して危機遺産となり、2015年から2017年にはISIL(イスラム国)の攻撃により遺跡の多くが破壊された。
写真:Aladdin Hammami / Unsplash
プーラの街は紀元前177年にローマ人によって征服され、ローマ化が進んだ。1世紀にウェスパシアヌス皇帝の命によって造られた円形競技場がほぼ完全な形で残されている。約2万人の観客を収容し、古代ローマ時代には剣闘士の戦い、中世には騎士の模擬戦、現在ではコンサートや映画祭で使用されている。
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イスラエル第2の都市テルアビブ・ヤフォから北に40kmにあるカイサリアに、イスラエルを代表するローマ遺跡がある。ヘロデ王の宮殿跡は、一部が海の中に沈んでいるが、円形劇場は現在でもコンサートなどに使用されている。
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アルジェリア北東のジェミラは、かつてクイクルムと呼ばれ、古代ローマ時代の遺跡が良い状態で現存する。劇場、集会場、住居跡などが世界遺産に登録されている。
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