前言撤回!:引退宣言を覆した有名人たち
一時の気まぐれにせよ熟考の末の決断にせよ、引退を発表したり活動の場を移したりするセレブは少なくなり。ところが、その「さよなら」が決定的なものでないことも往々にしてある。しばらく経ってカムバックしたり、ずるずると引き延ばしたあげく、引退しないことだってあるのだ。では、引退宣言をしながらカムバックした(あるいはそもそも引退しなかった)スターたちには、どんな面々がいるのだろう?
2013年12月、ジャスティン・ビーバーはTwitterのプロフィール(自己紹介文)を更新し、フォロワーたちに別れを告げた。「親愛なるフォロワーのみんな、僕は公式に引退します」というのが、その衝撃的な宣言である。しかし、その後も音楽界を引退することはなく、派手な活躍を続けている。
1996年の映画『マチルダ』の主人公マチルダの役で、マーラ・ウィルソンは一躍有名になった。あんまり有名になりすぎて、まだ13歳のときに引退を発表する。とはいえ演技の世界から完全に離れたわけではなく、たとえば『ボージャック・ホースマン』や『ベイマックス ザ・シリーズ』といったアニメ作品で声優をつとめている。
同じく天才子役で早くに引退を宣言したのがマコーレー・カルキン。1994年14歳のとき、演じることに疲れた彼はふつうの生活を望んで最初の引退宣言をしている。次の引退宣言は2016年、こんどは絵画や彫刻といったクリエイティヴな活動に専念するためだった。が、実際は俳優としての活動を続けており、最近の仕事では2021年にアメリカのテレビシリーズ『アメリカン・ホラー・ストーリー』の10シーズン目に登場した。
『ゲーム・オブ・スローンズ』のジョフリー・バラシオン役で成功の甘き蜜を知ったジャック・グリーソンだが、2014年に引退を決意する。その心境を彼は『エンターテインメント・ウィークリー』誌に語っている:「僕は以前、演技を楽しめていました。しかし何かを仕事にすると、その何かとの関係が変わってしまいます。演技が嫌になったというわけではありません。ただ、今やりたいことではなくなったんです」。その後の彼はしばらく演劇と学業(神学と哲学)に専念する。だが、2020年には「BBC Two」の連続ホームコメディ『Out of Her Mind』、2021年にはCraig Austin Reynolds監督のアイルランド映画『Rebecca's Boyfriend』で、われわれはジャック・グリーソンの姿を目にすることになる。リーアム・ニーソンと共演の映画『In the Land of Saints and Sinners』も2023年に公開される予定だ。
ブリトニー・スピアーズが引退を宣言したのは一度や二度ではない。引退と引退の合間に息継ぎしながら活動しているとさえ言えるかもしれない。しかし誰にも「初めて」はあるもので、ブリトニー・スピアーズの場合は2002年のことだった。ジャスティン・ティンバーレイクとの破局、メキシコとイギリスでのコンサートの大ブーイングの後、彼女は数ヶ月の活動停止を決める。代理人によると、ルイジアナの家で母親に世話をしてもらう必要があったようだ。
2011年、ブラッド・ピットはオーストラリアのテレビ番組『60ミニッツ』で、あと3年したら俳優業を辞めるつもりでいると語った(そのコメントに含みを持たせはしたが)。実際には、目下のところ現役を継続している。だがカメラの前で演じる仕事を年々減らしつつあることは確かで、その活動の重心はプロデューサー業へと移りつつある。
1999年、“Timeless”と題されたコンサートを最後にバーバラ・ストライサンドはキャリアを引退すると発表する。しかし後にその約束をあっさり覆し、2006年のコンサート“Streisand”で大成功を収める。このコンサートで9,200万ドルの収益を得たとか。
2003年、あらゆる栄光を彼にもたらした音楽産業に挙句うんざりし始めたジェイ・Zは、ならばいっそ「さよなら」しようと決める。その「さよなら」はドキュメンタリー映画『Fade to Black』(2004年公開)という形をとり、マディソン・スクエア・ガーデンでの有名なコンサート(2003年11月25日)という締めがついた。しかるのちもジェイ・Zは歩みを止めず、発表されたアルバムはいずれも大きな成功を収めている。
2007年、ケヴィン・スペイシーは英ITVのテレビ番組『London Tonight』で、すべてを辞めるつもりだと話した。「役者としてのキャリアはもうどうでもいい。私にとっては終わったことです」とスペイシーは語っている。にもかかわらず、引退しないことはもちろん、その後の出演作(たとえば米ドラマシリーズ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』)ではキャリアを通じて最高の演技を見せている。それからしばらく経って2017年、過去のセクシュアルハラスメントを何人もの男性から告発され、彼は引退を余儀なくされた。
マイケル・J・フォックスは、映画界とテレビ界から引退すると2000年5月に公言した。長年患ってきたパーキンソン病によるものだった。俳優活動を一時退いたが、その後テレビ番組に出演したり、声優をつとめたりしている。
レーシングドライバーのミハエル・シューマッハは二度の引退を経験した。最初は2006年、中国グランプリの優勝の後だった。2010年にメルセデスのチームからF1に復帰し、2012年に二度目の(そして最後の)引退をする。
2009年11月、第10回ラテン・グラミー賞の授賞式でラウラ・パウジーニは、しばらく音楽活動を停止することを発表した。家族と過ごす時間をふやし、ゆくゆくは母親になりたいという思いがあったのだ。2011年、アルバム『Inédito』でカムバックを果たす。それはキャリアを通じて最もファンに待ち望まれたアルバムだった。
こちらも歌手、エド・シーランもしばらく休養をとった。2019年のことである。「2017年からほとんど休みなしでやってきたから、ここらでちょっと一息入れて、どこかに行ったり、書いたり、読んだりしようと思う。しばらくソーシャル・メディアからも離れるよ。いずれ戻ってくるけれど」と、自身のInstagramなどに綴っている。2021年、5枚目のアルバム『=』(イコールズ)でエド・シーランは帰ってきた。
ニッキー・ミナージュの引退報告はファンにとって寝耳に水の出来事だった。2019年9月のことである。「引退して家庭を持つことに決めました。これでみんなハッピーよね。ファンのみんな、あたしのことをこれからも、死ぬまでずっと推しつづけてね」という内容をTwitterに書き込んだのだ。ニッキー・ミナージュは恋人ケネス・ペティとの関係を深めたかったようである。結局彼女は引退することなく、2019年11月にはコロンビアのシンガーソングライター「カロルG」とコラボして「Tusa」という曲を歌っている。
2015年12月、マリア・テレサ・カンポスの番組でのインタビューで、パブロ・アルボランは音楽活動を停止すると語った。「僕はごく普通の人間だから、ごく普通の生活に戻りたいんです。ちょっと足を止めて、帆を下ろそうかなと思っています」というのがその言葉だった。その帆を2年間下ろしたあと、4枚目のスタジオアルバム『Prometo』でふたたび航海がはじまった。
2023年、バッド・バニーは『ビルボード』誌で自身の意向を明らかにする。「休もうと思っているんだ。2023年は僕ひとりのため、体の健康のため、心の健康のため、ひと息入れるため、これまでの成果を味わうために使うつもりだ。お祝いの年にしようと思う。あっちこっちへ行ったり、ボートに乗ったり、海で泳いだり」。いずれにせよ、一時的な休息になりそうである。
リック・モラニスは主に80、90年代に活躍した俳優で、ウォルター・ヒル監督の『ストリート・オブ・ファイヤー』や映画『ゴーストバスターズ』(どちらも1984年)の役どころが特に有名である。彼は2005年に引退した。「僕はシングルファザーです。子どもたちを育てるかたわら、映画作りに伴う移動スケジュールをこなすのはとっても難しいんですよね。だから少しの間仕事を休みました。最初は少しの間だったはずの休みがだんだんと長くなり、それでいて僕は仕事に戻りたいという気にならなかったんです」と『USA Today』紙に語っている。その後もテレビ番組にはときどき姿を見せていたのだが、2020年、映画『ミクロキッズ』のシリーズ続編に再び取り掛かっていることを明かした。
1993年、父が強盗によって殺害され、マイケル・ジョーダンは引退を宣言する。その翌年、彼は野球に転向するが、1995年にバスケットボールへの復帰を果たす。1999年に再び引退するが、最終的な引退は2003年のことだった。