駆け出し時代のアンジェリーナ・ジョリー、22歳でミック・ジャガーを虜にする
アンジェリーナ・ジョリーは俳優ジョン・ヴォイトの娘としてハリウッドデビューを飾り、22歳だった1997年頃にはその名を知られるようになっていた。そして、2年後の1999年には『17歳のカルテ』でアカデミー賞助演女優賞を受賞することになる。
1997年当時、24時間ミュージック・ビデオをかけつづける音楽専門チャンネル「MTV」などを通じ、優れたミュージック・ビデオが高い評価を得るようになっていた。
90年代はミュージック・ビデオの制作費が急上昇した時代で、巨額予算をつぎ込んだ大型作品が数多く制作された。『フォーブス』誌によれば、最も制作費が高いMVはマイケル・ジャクソンとジャネット・ジャクソン兄妹が共演した『Scream』だという。
1997年、円熟期を迎えていたローリング・ストーンズは21枚目のアルバム「ブリッジズ・トゥ・バビロン」をリリース。
「ブリッジズ・トゥ・バビロン」からファーストシングルとしてカットされ、本アルバム中最高の売り上げを記録したのが「エニバディ・シーン・マイ・ベイビー?」。この曲のMVにはある駆け出し女優が出演しているが、それが、若き日のアンジェリーナ・ジョリーだ。
アンジェリーナが務めたのは、ミック・ジャガーが恋に落ちてその姿を探し求めるストリッパー役だ。このミュージック・ビデオはニューヨーク市内の交通量の多い通りで撮影された。
ニューヨークの裏社会をすり抜けていくアンジェリーナ。恋焦がれた相手の姿を追い求めて通りから通りへと移動していくミック・ジャガーという構成だ。
アンジェリーナはビデオクリップでスキンヘッドに近いベリーショートにしている。シンプルながらきわめて魅力的な作品で、ミック・ジャガーの演技はそれが演技とは思えないほど真に迫っていた。
アンジェリーナの妖しい魅力は全編を通して発揮され、ローリング・ストーンズのリーダーは現実世界でもすっかり魅了され、恋に落ちてしまったのだ。
アンジェリーナの妖艶な美貌にすっかり心を奪われたミック・ジャガーは、何カ月もの間、彼女を口説き落とそうと試みたという。
当時ミック・ジャガーは54歳で、アンジェリーナ・ジョリーより32歳年上だった。とはいえ、後にアンジェリーナは20歳年上のビリー・ボブ・ソーントンと結婚しているため、年齢差は彼女にとり大きな問題ではなかったかもしれない。ともあれ、一般的にはかなりの年齢差であることは確かだ。
さらに、当時のアンジェリーナ・ジョリーは独身ではなく既婚者だった。『サイバーネット』の撮影で知り合ったジョニー・リー・ミラーと愛に満ちた結婚生活を送っていたのだ。
そしてミック・ジャガーもジェリー・ホールと結婚していた。ただし、それが悩みの種になることもあったようだが。
ミック・ジャガーはアンジェリーナに対し、誘いの電話、高価なギフトの数々、突然の訪問など、あらゆる手段を尽くて誘惑を試みた。ロックスターにしてはめずらしく、長期間にわたりアタックを繰り返し、果てはアンジェリーナの母親さえも巻き込もうとした。
アンジェリーナの母親にしてみれば、50代で既婚者とはいえスーパースターの座にあるミック・ジャガーの方が、アンジェリーナの当時の夫で俳優のジョニーよりも好ましいと考えたようだ。しかし、アンジェリーナはミックと母親に対し、一貫して「ノー」を突き付けた。
アンジェリーナ・ジョリーに対するミック・ジャガーの片思いが叶っていたら、どうなっていただろう。ビリー・ボブ・ソーントンとのロマンスのように激しくも短命な恋になっていた可能性もあるが、ともあれハリウッドで最もビッグなカップルのひとつして長く語り継がれたことだろう。