有名子役の転落:『ヘアスプレー』出演女優アマンダ・バインズのいま
10代のころは子役としてならしたアマンダ・バインズだが、いまやそのキャリアは見る影もない。役者としての活躍は25歳ころを最後に途絶え、最近はメンタルヘルスの問題や逮捕、保護監察処分といったニュースばかりが報じられている。かつての有名子役はいま、どうなってしまったのだろうか。
2023年12月、37歳となったアマンダはまぶたの手術を受けたことをインスタグラムで公表。新たな顔を動画でお披露目した。
画像:@amandaamandaamanda1986 / Instagram
動画でアマンダはこう語っている:「いままで言っていませんでしたが、眼瞼手術を受けました」また、動画では髪と眉毛を染めているのも確認できる。アマンダによるとまぶたの手術は「自信をつけるという意味で、いままでにやったことのなかではベストだった」という。
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手術を経て心機一転、新たな仕事も始めたらしい。役者業から離れて以来迷走気味だったアマンダだが、今度はSporifyでポッドキャストを始めたのだ。その名も「アマンダ・バインズとポール・シーメンス:ザ・ポッドキャスト」だ。
画像:@AmandaBynesPaulSieminski / YouTube
ポッドキャストのテーマはアマンダの自分語りではなく、さまざまな業界の人にフォーカスするというコンセプトだという。初回はロサンゼルスのタトゥー・アーティストであるダヒリア・モスにインタビューしている。
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最近のアマンダ・バインズは、メンタルヘルスの問題やそれに由来する問題行動が報道されることが多かった。エンタメニュースサイト「TMZ」が報じているように、2022年にはロサンゼルスの街を裸で徘徊しているところを保護され、その後1か月ほど病院で過ごしていた。
子役として2000年代を席巻したバインズだが、2022年、ロサンゼルスの街中を裸で徘徊しているところを発見された。「TMZ」によると、道を歩いていたアマンダが車を呼び止め、ドライバーにさっきまで自分は錯乱していたと伝えたという。
『ニューヨーク・ポスト』紙が集めた証言によると、アマンダは「数日間道をさまよい歩いて」いて、それから自分で警察を呼んだという。同紙やほかのメディアが調べたところ、さまよっているアマンダを女の子が助けるシーンを収めたTikTok動画もあった。
写真:@KaitlynHotFox / TikTok
アマンダの車が駐車されていた場所も、どれほどの期間さまよっていたのかのヒントになりそうだ。『ニューヨーク・ポスト』紙によると、彼女の車は「自宅から65kmほど、発見されたロス市街から40kmほど離れた場所」にあったという。当局はアマンダが公共交通機関を使ったか、ヒッチハイクしたとみている。
写真:@rlamandabynes / Instagram
アマンダは最終的に警察署に連れて行かれ、そこから精神疾患の治療施設へと移送、1か月近く入院していたという。退院後は問題行動も減り、安定して生活できるようになったようだ。
現在37歳のアマンダ・バインズ。ここに至るまで、まさに栄枯盛衰というべきキャリアの道のりがあった。2000年代には超有名子役として大活躍だったが、その後道を踏み外し、9年もの間両親を成年後見人として保護下に置かれることになってしまった。
アマンダの歩みは栄光の輝きと、暗い苦難に満ちている。過去の活躍を振り返り、どうして今のような状況に陥ってしまったのか、その経緯をチェックしよう。
アマンダ・ローラ・バインズは1986年4月3日、カリフォルニア州サウザンドオークスで生まれた。父親は元歯医者で、母親は歯科衛生士兼事務員だった。
写真:『ロイヤル・セブンティーン』の一場面
アマンダがテレビでの仕事を始めたのは7歳のころ、コマーシャル出演が最初だった。そしてロサンゼルスのコメディクラブが主催する講座に参加中にケーブルチャンネル「ニコロデオン」のプロデューサーに見出され、コメディドラマへのオーディションに参加するよう勧められた。
10歳でコメディ番組『オール・ザット』(1996-2002)に出演開始。アマンダの役者としてのキャリアがはじまった。
1999年には『オール・ザット』での自身のキャラクターに基づいた冠番組『アマンダ・ショー』(1999-2002)が始まった。この番組の放送中、アマンダは毎年「ニコロデオン子供が選ぶお気に入り女優賞」を受賞した。
2002年から2006年にかけてアマンダはいくつかの若者向け映画に出演、ヒット作も出た。ちなみに『ビッグ・ライアー』(2002)ではフランキー・ムニッズと共演したが、奇しくも彼もまた早い段階で役者業から引退している。
『ロイヤル・セブンティーン』(2003)ではアマンダは生き別れた父親を捜しにロンドンに向かうティーンエイジャーを演じた。映画では、コリン・ファース演じるその父親は実は非常に裕福なイギリス貴族で、そもそもアメリカにいる娘のことを知らなかった、という展開になる。
『アメリカン・ピーチパイ』(2006)も印象的だ。アマンダ演じるヴァイオラはサッカーチームに入りたいが、女子の入部は認めてもらえない。そこでヴァイオラは男装してチームに潜入。ところがヴァイオラはチームメイトのデュークに恋してしまう。デューク役は若くて初々しいチャニング・テイタムだ。
他にも、アマンダの代表作と言えばニコロデオンのドラマシリーズ『恋するマンハッタン』(2002-2006)も欠かせない。アマンダはニューヨークに住む姉の家に転がり込むことになったティーンエイジャー、ホリー・タイラーを演じた。その姉を演じるのはドラマ『ビバリーヒルズ高校白書』(1990-1993)のジェニー・ガースだ。
こうしてハリウッドのビッグネームと共演したのみならず、アマンダはいくつか賞も獲っている。2003年から2005年には「10代が選ぶドラマ女優」のコメディ部門にノミネートされたし、「子供が選ぶお気に入り女優」の映画部門では何度か受賞もしている。
結果的に彼女の映画キャリア後期の出演作となったのが『ヘアスプレー』(2007)だ。ジョン・トラボルタ、ミシェル・ファイファー、クリストファー・ウォーケン、ジェームズ・マースデン、クイーン・ラティファ、ザック・エフロンなどの有名俳優らと共演した今作はアマンダのキャリアの中でもひときわ目立っており、興行的にも批評的にも大成功となった。
『小悪魔はなぜモテる?!』(2010)ではアマンダは意地悪な女の子役を演じ、エマ・ストーンやペン・バッジリー、リサ・クドロー、スタンリー・トゥッチなどと共演した。まさにアマンダのキャリアも絶頂期かと思われたのだが、これが彼女の最後の映画となってしまった。
2010年、オフィシャルアカウントからのツイートで突然女優業からの引退を表明したのだ(当該ツイートは後に削除)。
『エンターテインメント・ウィークリー』によると、2010年6月19日、アマンダは次のようにツイートした:「女優業は実際にやってみるとそんなにおもしろくない」なお、このツイートは後に削除されている。
その後もアマンダはツイートを連投、こう語っている:「やりたくないと思ったら、やめる。もう女優はやりたくないから、やめた。24歳で引退ってのは確かに早いけど、いまここで表明します」
こうして女優業から引退して以降、アマンダの状況はどんどん悪化していくことになる。エンタメニュースサイト『Page Six』によると、アマンダは2012年に飲酒運転で逮捕されている。しかもただ検問で引っかかったというのではなく、ハリウッド西部で自身のBMWを運転中に保安官代理の車に突っ込み逃走、追跡されたというのだ。
危険運転はその後も続いた。同じ年に二回もひき逃げで逮捕されている。
2013年、タイムズ・スクエアの自宅マンションのロビーでマリファナを吸っているところを発見され、薬物所持と危険行為の罪で逮捕された。捜査官が36階にある彼女の自宅に入った時に、アマンダはマリファナ用のパイプを窓から投げ捨てるという非常に危険な行動に及んだのだ。だが、この事件も2014年に不起訴に終わっている。
同じ2013年にはサウザンドオークスで近所の家の私道に放火したとして逮捕された。この時アマンダは強制的に72時間の精神科への措置入院を施されおり、経済的な問題に対処するために両親が一時的な成年後見制度の適用を申し入れている。
2014年には自らのツイッターアカウントから自分の父親に虐待されていると主張するツイートを連投し、再び措置入院となった。アマンダは父親が自分の頭にマイクロチップを埋め込んだとも主張していた。これらのツイートは後に削除されたが、エンタメニュースサイトの『ET Online』や『Hollywood Reporter』などが保存している。
それでもアマンダはツイッターアカウントでの投稿を止めず、世界に向けて自分の抱えている問題を発信し続けた。2014年には双極性障害と診断されたとツイート。『E! News』によると「毎週精神科医と心理士に会ってるから、大丈夫」ともツイートしていたという。
こういった出来事を受けて、アマンダの両親は2014年10月に無期限の成年後見人として指定された。『ピープル』誌によると、アマンダの奇行の中にはニューヨークの百貨店バーニーズでの万引き未遂まであるという。
『ピープル』誌はこの問題についての裁判所資料を入手、アマンダがカルティエなどの高級宝石店で大金を浪費していたことを明らかにした。また、アマンダは知らない人に高価なプレゼントを買ったりもしていたらしい。
『ピープル』誌の報道によると、2014年時点でのアマンダの資産は500万ドル(約6億5000万円)と見積もられている。同じく成年後見制度を適用されたブリトニー・スピアーズの場合とは異なり、アマンダの母親リンは医療的・経済的な問題については専門家に権利を委譲、自分では契約に関する権利などのみを娘に対して行使している。
2017年、母親のリンが裁判所にアマンダの経済的権利を復帰させるよう申し出た。母親はアマンダが自身の資産を適切に管理できると主張した。医療的な面ではいまだ権利は完全に回復しておらず、そういった側面においては母親はアマンダに対する管理を継続している。『エル』誌が報じた。
同じく成年後見制度を適用されたブリトニー・スピアーズの場合とは異なり、両親はアマンダの生活をそれほど強くコントロールしているわけではない。そして2022年3月には成年後見制度の適用が完全に終了。『Page Six』の報道によると、昨年2月にアマンダが健康状態の改善を理由に終了を申し出て、母親もそれを支持したという。
成年後見制度が適用されているかどうかにはかかわらず、アマンダは芸能界に戻ってくることはなさそうだ。『Page Six』の報道によると、2014年にアマンダはファッション関係の専門大学に入学。2019年に卒業予定だとされていた。
実はファッションを学ぶことはアマンダの長年の夢だった。1999年に『ホーウィー・マンデル・ショー』に出演した際、12歳のアマンダはこう語っていた:「ファッションデザイナーになりたいです。絵を描くのが好きなんです」
成年後見制度の適用が終了してすぐの2022年3月、アマンダは自身のインスタグラム上でネイリストになるために専門学校に入学すると宣言した。
アマンダがこれからどうなるのか、予測するのは難しい。いま抱えている多くの問題を解決しネイリストとなることができれば、多くの人が彼女を一目見ようと列をなすだろう。あるいは、最近始めたポッドキャストを続けるのかもしれない。これからの活躍に期待しよう。