名優モーガン・フリーマンを悩ませる、16年前に起こした事故の後遺症とは
深みのある声で知られる米俳優モーガン・フリーマン。50年以上にわたるキャリアを通じて映画『ショーシャンクの空に』や『ミリオンダラー・ベイビー』など多くの作品に出演したほか、ナレーションでも活躍している。
順風満帆の人生を送っているように思われるが、2008年にミシシッピ州の自宅近くで交通事故を起こして以来、慢性的な痛みを抱えているという。
2008年、フリーマンは運転中にハンドル操作を誤って車が横転、ジョーズ・オブ・ライフ(事故車などから人を助け出すためのこじ開けツール)で救出される大事故を起こした。これによりフリーマンは腕とひじを骨折したほか肩を痛め、16年経った今でも後遺症に苦しんでいるという。
2012年にフリーマンは雑誌『エスクァイア』のインタビューに応じ、身体の広範囲に痛みをもたらす「線維筋痛症」に苦しんでいることを明かした。「腕を上下させると耐えがたい痛みを感じる」としている。
英国のヘルスウエブサイト「NHS」では、線維筋痛症(Fibromyalgia Syndrome:FMS)は全身に痛みを引き起こす長期的な疾患と定義されている。痛みに対する感受性が高まるほか、筋肉の硬直、睡眠障害、集中力の低下、頭痛、過敏性腸症候群、不安感やうつ病などの症状を伴い、歌手の故シネイド・オコナーが発症していたほか、女優で歌手のレディー・ガガ、コメディアンのジャニーン・ガラファローもこの症状に悩まされているという。
後遺症に苦しむフリーマンを取材した『エスクァイア』誌のトム・キアレラ記者によれば、損傷した神経を修復するための手術を受けたものの痛みは消えず、運動能力や生活の質に大きな影響が出ているという。「(フリーマンは)歩くときもじっとしているときも、ソファーから立ち上がるときも、芝生でつまずいても痛みがあるというのです」と伝えている。
線維筋痛症を発症したフリーマンは、以前のようにジェット機の操縦やカリブ海への単独航海、毎日の乗馬やマニュアル車の運転もできなくなったが、つねに前向きな姿勢を保っている。「こうした変化には意味があるんだ。新しいことにも自分がおかれた新たな状況にも慣れる必要がある。私は今でもゴルフができ、仕事も続けている。それに外を歩くだけでもかなりハッピーになれるんだ」と同誌に語った。
フリーマンは痛みの症状を抑えるために圧迫グローブを着用している。2023年のアカデミー賞授賞式でもつけていた見られたが、これは圧迫を加えることで血液の循環を促し、痛みを和らげるというものだ。ただし映画出演時には使っておらず、ビデオ撮影でもめったにはめることはない。
2023年12月、米『ナショナル・エンクイラー』紙はある情報筋の話として、フリーマンは容体が悪化して「絶え間ない苦痛」に襲われていると伝えた。これに対しフリーマンの代理人が米ニュースサイト「Radar Online」を通じ、「彼の健康状態には問題はありません」としてうわさを否定した。
フリーマンはつねに疼痛を抱えているが、俳優業を引退するつもりはないようだ。テレビシリーズ『特殊作戦部隊:ライオネス』ではエドウィン・マリンズ米国務長官役で第1シーズンに続き第2シーズンにも出演を果たし、2023年の米人気TVドキュメンタリー『Life on Our Planet』ではナレーションを担当している。
フリーマンは第二次世界大戦が始まる2年前の1937年、人種隔離が公然と行われていた米国南部のテネシー州メンフィスに生まれた。6歳のときに家族とともにシカゴに移り住み、小学校で舞台に立ったという。本格的に演技を始めてからは数々の作品に出演して史上最高の俳優の一人とされ、アカデミー賞やゴールデングローブ賞など権威ある賞を受賞。現在87歳になるが、事故の後遺症を抱えているにもかかわらず精力的に活躍を続けている。