2022年、世界の紛争地帯はいま

2022年現在も継続中の紛争
ウクライナ:切られた火蓋
西側諸国の対応
ヨーロッパにとっての脅威
カザフスタンに展開するロシア軍
ベラルーシ:ルカシェンコの駆け引き
台湾:高まる中国の圧力
米中紛争を背景にしたインド・パキスタンの対立
インドと中国の緊張関係
アフガニスタン:タリバン復権6ヶ月
イラン:核の脅威
イエメン:イランとサウジアラビアの対立を背景とした内戦
新たな火種?
シリア:拘束された元戦闘員たちの地位
リビア:ヨーロッパ対岸の火種
モロッコとアルジェリアの緊張関係
不安定なサヘル地域
世界は平和に向かうのか?
2022年現在も継続中の紛争

ついに放火が上がったウクライナ、そして台湾、イエメン…… 国家間の戦争は以前ほど頻繁に行われなくなったとはいえ、現在も紛争が続く地域は残されています。2022年の火種はどこにあるのか、見てゆきましょう。

 

ウクライナ:切られた火蓋

ウクライナ東部のクリミア半島をロシアが併合して8年、ウクライナはふたたびロシアと欧米諸国の緊張関係の舞台となっています。ウクライナとの国境地帯に大規模な部隊を展開させていたプーチン露大統領は、ついに侵攻を開始しました。

西側諸国の対応

緊張緩和を目指した交渉が行われたものの、ロシアはウクライナ侵攻を開始。ウクライナは、旧ソ連の勢力圏を支配下におさめたい西側諸国とロシアの対立の舞台となっています。

ヨーロッパにとっての脅威

仏・独首脳は、2014年にロシア・ウクライナ間の紛争終結の枠組みを定めたミンスク合意を遵守するよう呼びかけています。しかし、ドイツがロシア産天然ガスへの依存を強めたことが、事態を複雑にしてしまっているのです。

カザフスタンに展開するロシア軍

ウクライナに対する舞台の展開と並行して、ロシア政府は1月初旬に中央アジアの大国、カザフスタンにも軍隊を派遣しました。このケースは積極的な攻勢というよりも、大規模な抗議運動に直面した地元の親ロシア勢力を支援するための措置です。しかし、カザフスタンにおける前例のない激しい活動の末、ロシア軍はすでに撤退しました。

ベラルーシ:ルカシェンコの駆け引き

ロシアの同盟国ベラルーシも、ルカシェンコ大統領のスキャンダラスな再選とその後の弾圧政策を理由に、西側諸国の制裁を課されています。

台湾:高まる中国の圧力

中国は台湾を領土の一部と主張しており、独立を受け入れたことは一度もありません。習近平国家主席は最近、再統一の意志を露わにしており、台湾侵攻の可能性が高まっているのです。しかし、米国の立場はあいまいです。台湾に対する軍事的援助を行う一方で、侵攻があった場合、台湾防衛に参戦するという約束はしていません。

米中紛争を背景にしたインド・パキスタンの対立

南アジアの核保有国、インドとパキスタンは長年の緊張関係にあります。両国ともに米国と同盟を結んでいますが、パキスタンは近年、中国と米国を天秤にかけるようになっており、米国から疑いの目を向けられています。インド・パキスタンの紛争が超大国間のグローバルな対立の一部を成していることは間違いなさそうです。

インドと中国の緊張関係

そのため、中国政府と伝統的に西側寄りの姿勢をとるインドとの間で緊張が高まるのは必然です。チベットやヒマラヤの一部では領土紛争が続いており、国境地帯では両国の軍隊がたびたび姿を見せるようになっています。

アフガニスタン:タリバン復権6ヶ月

昨年夏の首都カブール陥落とタリバン政権の復活は国際社会にとって大きな驚きでした。予想されていたとおり、新政権はイスラムの教えを厳格に適用した、時代にそぐわない統治を標榜しています。しかし、アフガニスタンの人々がおかれた過酷な状況を前にして、タリバンは国際社会に対し中立的な援助を求めるようになっています。この国は今、安定に向かうのか混迷が続くのかの岐路に立たされていると言えます。

イラン:核の脅威

2015年、イラン政府は主要6ヵ国との間で核兵器開発の縮小に向けた合意に達しましたが、問題は未だに解決していません。イランは、イラク・シリア・レバノンといった中東諸国に強い影響力を及ぼし続けているのです。これに対しイスラエルの首相は武力による解決の姿勢を見せており、同盟国に対してイランの「恐喝」に屈しないよう呼びかけました。

イエメン:イランとサウジアラビアの対立を背景とした内戦

イランはここ数年、中東における最大のライバル、サウジアラビアとイエメン領内で間接的に対峙してきました。サウジアラビアが主導する連合国の支援を受けるイエメン政府と、イランの支援を受けるシーア派反政府勢力フーシ派との間で内戦が激化しているのです。国際的な注目は浴びていないものの、犠牲者数は年々増え続けています。

新たな火種?

最近では、イエメンから発射されたドローンがイエメン政府の同盟国、アラブ首長国連邦の首都アブダビを攻撃、死者を出す事態が発生。フーシ派の指導者はこの攻撃が、フーシ派の拠点に対する大規模な軍事作戦を計画しているアラブ首長国連邦に対する反撃の一端に過ぎないと述べました。皮肉にも、サウジアビアとイランが緊張緩和に向かっている最中の出来事でした。

シリア:拘束された元戦闘員たちの地位

シリア紛争はイラクにおけるイスラム国の崩壊以来、落ち着きに向かっています。しかし、最前線で生まれた子供たちの存在や多数の逃亡者、未決拘禁者の地位に関する法的不備など問題は山積しており、現在拘留されている元イスラム国戦闘員の扱いは不透明なままです。

リビア:ヨーロッパ対岸の火種

カダフィ政権崩壊から10年、リビアはいまだ混迷を極めており、民兵同士の紛争や政情不安、移民の大移動といった問題に直面しています。近々この国で紛争が勃発するだろうという予想もありますが、地理的な位置を考えると、リビアで何か起きれば北アフリカ全域およびヨーロッパに影響を与えるのは間違いありません。

モロッコとアルジェリアの緊張関係

北アフリカ西部に位置する両国の関係はここ数か月で非常に険悪になっています。両国は、アルジェリアにおける民主化デモとパンデミックによる観光業の崩壊を背景として、昨年夏に国交を断絶したのです。武力紛争に発展する可能性は低いとはいえ、この地域に権益を握っている勢力は多いため、ないとは言い切れません。

不安定なサヘル地域

さらに南にあるサヘル地域(マリ・ニジェール・ブルキナファソ)では依然として武装集団が幅を利かせており、一般市民は集団疎開を余儀なくされています。この地域の諸国政府は2022年の介入計画を発表しましたが、状況はかつてないほど停滞しているようです。

世界は平和に向かうのか?

世界各地では大国を巻き込んだ緊張関係が生まれています。とはいえ、国家間の戦争は過去30年で稀になっており、おおむね世界の平和が保たれていることは忘れるべきでないでしょう。しかし、いくつかの紛争地帯は武力衝突に発展する可能性を秘めており、権威主義的な傾向を強める国家指導者たちも少なくありません。2022年、世界は平和に向かうのでしょうか?

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