シルベスター・スタローンをかつぎ、B級作品に出演させたアーノルド・シュワルツェネッガー

頭の切れる男、シュワルツェネッガー
真実味のある都市伝説
問題の映画
話は70年代にさかのぼる
二人のアクション映画スター
ライバル、仇敵、利害相反
シュワルツェネッガーはコメディに飛び込む
スタローンだって、みんなにウケたい
シュワルツェネッガーの邪悪な計略
シュワルツェネッガーに踊らされるスタローン
うまくいくはずがない
どちらも噂を認める
スタローン「シュワルツェネッガーにはめられた」
シュワルツェネッガー「いまだに笑える話だね」
100パーセント間違いない
美しい友情の始まり……
共同出資者であり、仕事仲間であり、友人でもある
筋肉より強し
頭の切れる男、シュワルツェネッガー

「もちろん筋肉もすごいけれど、彼は知能もずば抜けているんだ」と、アーノルド・シュワルツェネッガーを知る人々は口にする。たしかに、映画やスポーツ、政治の世界におけるキャリアを一目みれば、彼が極めて頭の切れる男であることは明らかだ。

真実味のある都市伝説

頭が良すぎるのも考えものである。初めて噂がささやかれてから30年以上経った現在、ある都市伝説が正しいことが明らかになった。アーノルド・シュワルツェネッガーがシルベスター・スタローンをだまし、スタローンのキャリアでも最悪の映画を作らせたというのだ。一体どういうことなのか。

問題の映画

問題となっているのは『刑事ジョー ママにお手上げ』(Stop! or My Mom will Shoot, 1992年)。スタローンがあの忘れがたいエステル・ゲティと共演した悪名高いコメディ映画である。

話は70年代にさかのぼる

今や語り草となっているシュワルツェネッガーの悪だくみについて語るには、ことの発端となった70〜80年代に遡らなくてはならない。その頃のハリウッドでスタローンとシュワルツェネッガーは、マッチョを看板にしたアクション映画の二大巨頭だった。

二人のアクション映画スター

スタローンは『ロッキー』や『ランボー』、シュワルツェネッガーは『ターミネーター』や『コナン・ザ・グレート』といった作品で、どちらもこのジャンルにおける正真正銘のスターになった。

ライバル、仇敵、利害相反

じき彼らは、正面きって対立するようになる。おたがいに一歩も譲らず、それぞれの映画で最高の演技を競ったのだ。シュワルツェネッガーがコメディの世界に飛び込むことを決めたのはまさにそんな折だった。目先を変えて、これまで馴染みのなかったジャンルに挑むことにしたのである。

シュワルツェネッガーはコメディに飛び込む

アーノルド・シュワルツェネッガーは『ツインズ』(1988年) や『キンダガートン・コップ』(1990年)といった映画につづけざまに出演し人気を博す。スタローンにしてみればなんとも面白くない。彼は仇敵の向こうを張って、同じくコメディ路線を目指すのだった。

スタローンだって、みんなにウケたい

最初の試みは『オスカー』(1991年)。フランスの喜劇俳優ルイ・ド・フュネスの名作映画のリメイクである。だが批評は芳しくなく、興行的には大コケだった。3,500万ドルの製作費に対し、興行収入は2,350万ドルにとどまった。

シュワルツェネッガーの邪悪な計略

スタローンの不運はここからが本番だった。それはアーノルド・シュワルツェネッガーが『刑事ジョー ママにお手あげ』の脚本を手にするところに始まる。この作品がどうしようもない代物であることをすぐさま見てとった彼は、しかしそれをあっさりと捨てはしなかった。逆に「この脚本は素晴らしい」という噂を広めることにしたのである。シュワルツェネッガーも出演を強く希望している、と。

シュワルツェネッガーに踊らされるスタローン

そのような噂がスタローンの耳に届かないことがあるだろうか? 彼はあらゆる手を尽くし、その映画の主役の座をつかんだ。シュワルツェネッガーの悪意ある企みは面白いほどうまくハマったのである。あとは高みの見物を決め込んでいるだけでよかった。果たしてライバルは、さらなるコメディ・ヒットを飛ばせるかな……

うまくいくはずがない

シュワルツェネッガーの思ったとおり! 批評はさんざん、映画はゴールデンラズベリー賞を三つの部門で受賞し、スタローンは最低主演男優賞に輝いた(最低主演女優賞にエステル・ゲティ、くわえて最低脚本賞)。ただし、映画の興行収入は7,000万ドル、いっぽう製作費は4,500万ドルだった。悪くない数字である。

どちらも噂を認める

では、この都市伝説が真実であるとなぜ言えるのか? じつは『ハリウッド・リポーター』のインタビューで双方が事実を認めているのだ。

スタローン「シュワルツェネッガーにはめられた」

「シュワルツェネッガーがこの映画をやるつもりだと聞いて、俺は心中こう誓った、『やつには絶対負けないぞ』とね。思うに、それがあいつのねらいだったんだ」と、シルベスター・スタローンは過去に同誌のインタビューで語っている。彼の読みは正しかった。

シュワルツェネッガー「いまだに笑える話だね」

実のところ、同誌は記事の掲載に先立ってシュワルツェネッガーに連絡をとり、事実関係を確認していたのである。そしてもちろん、彼の答えはイエスだった。

100パーセント間違いない

「100パーセント間違いない。そのころの僕たちはイカれたことならなんでもして、対抗意識をギリギリのところまで高めていたんだ。僕たちにとっても、他の人たちにとってもありがたいことに、今ではおたがい助け合う関係だよ」。以上、そっくりシュワルツェネッガーのコメントである。

美しい友情の始まり……

まさしくその通りなのだ。一大転機が訪れたのは、二人がレストラン・チェーン「プラネット・ハリウッド」の共同出資者になったときだった。そこから始まった友情は、年を経るごとに(そしてバーベルを挙げるごとに)固くなっていった。

共同出資者であり、仕事仲間であり、友人でもある

じっさい、今世紀に入ってから二人は共演も果たしている。なかなかに見どころのある『大脱出』(Escape Plan, 2013年)や、『エクスペンダブルズ』のシリーズだ。

 

筋肉より強し

めでたし、めでたし、といきたいところだが、二人のライバル関係はこれからも語り継がれるだろう。なぜなら、あの筋骨逞しいシュワルツェネッガーも含め、人体で最もパワーのある部分はやはり脳みそであるということがこのエピソードには示されているからだ。

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